就労継続支援B型の平均工賃はいくら?2026年版|月額・時給・生活できるかを解説
就労継続支援B型の平均工賃は、厚生労働省の令和6年度実績で月額24,141円です。令和5年度の22,649円から増えていますが、月額だけを見ると「これで生活できるの?」と不安になる方も多いはずです。
この記事では、B型の平均工賃を月額・時給換算・生活費との関係で整理し、工賃の計算方法、2024年度報酬改定の変更点、工賃アップの現実的な考え方までまとめます。
この記事は誰向け? 「B型の工賃はいくら?」「時給だとどれくらい?」「工賃だけで生活できる?」と知りたい利用者・ご家族、工賃規程や工賃向上計画を見直したい事業所スタッフ向けです。
工賃の基本ルール
B型の工賃は、利用者が生産活動を行った対価として支払われます。一般企業の「給料」とは仕組みが異なります。
工賃の財源
工賃の財源 = 生産活動の収入(売上)- 生産活動にかかる経費
ここで重要なのが、国や自治体からの訓練等給付費(事業所への運営費補助)を工賃に充てることは原則できないというルールです。工賃はあくまで、事業所の生産活動による収益から生み出す必要があります。
全国平均と時給換算の目安
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 全国平均月額工賃 | 24,141円(令和6年度) |
| 令和5年度の全国平均 | 22,649円(令和8年3月修正後) |
| 時給換算の考え方 | 月額工賃 ÷ 月の利用時間で計算 |
| 最低ライン | 利用者全体の平均が月3,000円程度を下回ると指定基準に抵触する可能性あり |
例えば、月20日・1日4時間通所する場合、令和6年度の全国平均24,141円を単純に割ると、時給換算は約302円です。
24,141円 ÷ 80時間 = 約302円
ただし、B型は雇用契約を結ばない福祉的就労です。最低賃金の対象になる「給料」ではなく、作業の対価として支払われる「工賃」なので、一般就労の時給とは仕組みが違います。
「3,000円」はあくまで事業所全体の平均値に対する基準です。個々の利用者の工賃が3,000円未満でも、それだけで問題になるわけではありません。
B型の工賃だけで生活できる?
結論から言うと、B型の工賃だけで一人暮らしの生活費をまかなうのはかなり難しいです。全国平均の月額24,141円は、家賃・食費・光熱費・通信費をまかなえる水準ではありません。
実際には、障害年金、生活保護、家族からの支援、グループホーム、各種減免制度などと組み合わせて生活設計を考えるケースが多いです。B型の工賃は「生活費の主軸」というより、収入の一部、日中活動の継続、働く練習、社会参加の意味合いが大きくなります。
筆者が関わった範囲でも、月額工賃が1万円台の事業所はあります。ただ、利用者さんの多くは障害年金などと併用しているため、工賃だけで生活しているわけではありません。「働く場所がある」「日中活動の居場所がある」という価値を重視している方も多い印象です。
関連記事: 生活費の考え方は「B型の工賃だけで生活できない?」、B型全体の仕組みは「就労継続支援B型とは?」もあわせてご覧ください。
工賃の計算方法
事業所の活動内容や利用者の状況に合わせて、いくつかの支払い方法があります。
| 計算方法 | 仕組み | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 時給制 | 利用時間に応じて支払い | もっとも一般的。利用時間がバラバラな場合に公平 |
| 日給制 | 1日の利用ごとに支払い | 作業内容が均一で、日ごとの成果差が少ない場合 |
| 月給制 | 月単位で固定額を支払い | 利用が安定している場合(ただし財源は変動する) |
| 出来高制 | 生産量・成果に応じて支払い | モチベーション向上を重視する場合 |
時給制の計算例
時給 = 工賃の財源総額 ÷ 営業日数 ÷ 1日の平均利用者数 ÷ 1日の平均利用時間
例えば、月の工賃財源が50万円、営業日20日、平均利用者数10人、平均利用時間5時間の場合:
500,000 ÷ 20 ÷ 10 ÷ 5 = 時給500円
これらの方法は組み合わせることも可能です。「基本は時給制+特定の成果が出たら出来高で上乗せ」といった運用をしている事業所もあります。
関連記事: 時給換算の見方は「就労継続支援B型の時給はいくら?」で詳しく解説しています。
作業内容による工賃差は問題ない?
「パソコン作業と軽作業で単価を変えるのは差別にあたらないか」という疑問がよくありますが、作業内容に応じた工賃差は一般的に問題ありません。ただし、工賃規程に設定理由を明記し、利用者に説明・同意を得ておくことが必要です。独自の評価基準を設ける場合は、管轄の行政機関に確認しておくと安心です。
2024年度報酬改定で変わったこと
2024年度(令和6年度)の報酬改定で、基本報酬の区分判定に使う「平均工賃月額」の算定方法が見直されました。この計算結果は事業所の収入に直結するため、正確に理解しておく必要があります。
新しい算定方法(3ステップ)
ステップ1: 前年度の工賃支払総額を算出
ステップ2: 前年度の「開所日1日あたりの平均利用者数」を算出
前年度の延べ利用者数 ÷ 前年度の年間開所日数
- 「開所日数」には工賃支払いが生じる生産活動の実施日を含める。レクリエーション等は含めない
- 平均利用者数は小数点第1位まで算出し、第2位以下は四捨五入
ステップ3: 平均工賃月額を算出
前年度の工賃支払総額 ÷ 平均利用者数 ÷ 12ヶ月
- 円未満は四捨五入
この改定の意味
平均工賃月額が高い事業所ほど高い報酬単位を得やすく、低い事業所は報酬が下がる可能性がある。 つまり、工賃向上への取り組みが経営面でもこれまで以上に重要になっています。
一方で、令和5年度以降の平均工賃は計算方法が変わった影響も受けています。厚労省資料でも、令和5年度から新しい計算方式が反映されていると説明されています。過去年度と比べるときは、単純に「利用者一人ひとりの手取りが急に増えた」とは読まない方が安全です。
工賃規程をちゃんと作る
工賃規程は、利用者に工賃を支払う際のルールをまとめた書類です。整備していないと実地指導(行政による運営チェック)で指摘を受ける可能性があります。
規程に含めるべき内容
- 工賃の金額・計算方法(時給制・日給制・出来高制などを具体的に)
- 支払方法(現金・振込など)と支給日
- 対象となる作業時間
- 工賃の財源(生産活動収益から支払われること)
- 欠勤控除・昇給などの独自ルール
運用のポイント
- 利用者の初回契約時に内容を説明し、書面で同意を得る
- 規程を変更した場合は、改めて説明・同意を取り直す
- 利用者がいつでも確認できる場所に掲示または配布する
工賃向上計画の策定と実践
B型事業所は3年ごとに「工賃向上計画」を策定し、都道府県に提出することが求められています。
計画に盛り込む主な項目
- 目標工賃月額: 計画期間の最終年度および各年度の目標
- 具体的方策: 販路拡大、新商品開発、生産効率の改善、利用者のスキルアップ支援など
- 地域連携: 関係機関との協力体制
計画を「絵に描いた餅」にしないために
計画は立てて終わりではなく、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回すことが重要です。
- P(計画): 現実的で具体的な目標を設定する
- D(実行): アクションを確実に実施する
- C(評価): 目標の達成度を定期的に確認する
- A(改善): 未達成の原因を分析し、方策を修正する
目標達成が難しい場合は、なぜ難しいのか原因を分析し、計画を見直すことが大切です。そのプロセス自体が次のステップへの改善につながります。
関連記事: 工賃アップの実践例は「B型の工賃を上げるには?」で整理しています。
余剰金・赤字が出たときの対応
余剰金が出た場合
- 工賃の増額で利用者に還元
- **賞与(ボーナス)**として一時金を支給
- 積立金として将来に備える(「工賃変動積立金」「設備等整備積立金」の2種類)
赤字になった場合
- 訓練等給付費で赤字を補填して工賃を支払うことは原則できない(災害・感染症の特例を除く)
- 積立金があれば取り崩して工賃に充てることは可能
- それでも不足する場合は、工賃額の見直し(減額)を検討せざるを得ない
だからこそ: 安定した収益確保と計画的な工賃向上への取り組みが重要です。赤字になってから対応するのではなく、日頃からの備えが利用者を守ります。
よくある質問
Q. 利用者個人の工賃が月3,000円未満でも問題ない?
事業所全体の平均値が基準を満たしていれば、個々の利用者の工賃が3,000円未満でも直ちに問題にはなりません。ただし、著しく低い工賃にならないよう配慮は必要です。
Q. パソコン作業と軽作業で工賃単価を変えてもいい?
はい、作業内容に応じた単価設定は一般的に問題ありません。工賃規程に設定理由を記載し、利用者に説明・同意を得ておくことが重要です。
Q. 工賃向上計画の目標を達成できなかったらどうなる?
目標未達成そのものがペナルティになるわけではありません。大切なのは原因を分析し、計画を見直すプロセスです。行政への報告・相談も適宜行いましょう。
まとめ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 工賃の財源 | 生産活動収益のみ。訓練等給付費は原則使えない |
| 平均工賃 | 令和6年度の全国平均は月額24,141円 |
| 時給換算 | 月額工賃 ÷ 月の利用時間で見る。平均値なら月80時間で約302円 |
| 生活できるか | 工賃だけでは難しく、障害年金や各種制度との組み合わせが現実的 |
| 計算方法 | 時給制・日給制・出来高制など。組み合わせも可能 |
| 2024年度報酬改定 | 平均工賃月額の算定方法が変更。工賃向上が経営に直結 |
| 工賃規程 | 必ず整備し、利用者への説明・書面同意を得る |
| 工賃向上計画 | 3年ごとに策定・提出。PDCAサイクルで継続的に改善 |
| 余剰金・赤字 | 積立金で備える。赤字時に給付費で補填は原則NG |
工賃は利用者の生活を支える大切な要素であると同時に、事業所の経営指標でもあります。適切なルール理解と透明性のある運用が、利用者の信頼と事業所の安定成長につながります。
次に読むなら、利用者目線では「工賃が高いB型事業所の見分け方」、事業所目線では「B型工賃の月3,000円基準とは?」が役立ちます。
参照元:
- 厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について」
- 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」
- 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」
- 厚生労働省「工賃向上計画について」
- 独立行政法人福祉医療機構 WAM NET
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